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2012年11月28日 (水)

家族による痰の吸引(4)

 自分の家族への痰の吸引については、家族が資格を授与する権限を持つ
 というアイデアを思いついたとき、マイナスの認定もできるようにしたら
 どうだろうかというアイデアも、同時に浮かびました。たとえば、看護師
 なら、誰しも、痰の吸引を行う資格を持ってるのでしょうが、経験とか
 得手不得手で、下手な看護師っていると思います。そんなとき、家族は、
 (自分の家族に対する行為のみが対象で)下手な看護師とか、危険に
 対する配慮が足りない看護師に対して、痰の吸引を行う資格の認定を
 取り消す権限を与えてはどうかというアイデアです。実は、資格がない
 のに医療行為が行った場合と同様に資格があるからといって、どんな
 医療行為でも行ってしまう場合にも危険性がつきまといます。たとえば、
 高齢の医者が、若かりし頃に憶えた方法を頼りに、衰えた視力と不自由な
 手を使って何らかの医療行為を行えば、怖いでしょ?でも、そういう
 医者がいる病院には行かないことで、実質的な拒否権を行使できますが、
 大きな病院において、あぶなっかしい看護師だからと言って拒否する
 ことは、意外と困難です。でも、命に関わるようなことなら、拒否する
 ことで、結局、双方の利益が守られたりすると思うんですけどね。
 そもそも、看護師もそうですが、医師免許なんて、なんらかの不正なり、
 事故があって停止したり剥奪するんじゃなくて、定期的に更新が必要な
 ようにして、未然に防いで欲しかったりします。でも、これは、別の
 テーマなので、アイデアを提示するだけにします。

 家族といえども、医療の有資格者なので、在宅で介護してたけど、症状の
 変化や定期的な検査などで入院が必要になった場合に、望めば、入院中も
 家族が痰の吸引を行うことができるようにするというのも、大切ですね。
 そうすれば、下手な看護師に任せてしまわずに済むし、必要な場合には、
 指導を行うことだってできますよね。

 家族が有資格者になることで、もうひとつの大きな目的を達成できるかも
 知れません。実は、現在の介護保険などの仕組みが、わかってないので、
 そんなバカな…と言われる思いつきである可能性があるのですが、家族が
 在宅で介護する場合、介護報酬が支払われるようにすべきだと思います。
 これは、有資格でなくても、認定権がなくても、今のままでも、報酬を
 受け取れるようにしてもいいのでしょうが、そうすると、一般的な老齢者
 への介護に対しても支払わねばならないのかと議論が複雑化すると思える
 ので、ケアプランの中で、在宅中の医療ケアが必要と認められれば、当然、
 そのケアを行うプロとしての家族に報酬を支払うべきだと訴えるのです。
 ただし、家族が認定権を使って有資格者としたボランティアとか、親戚の
 人とかに対して、支払うべきかとなると、議論が必要なところです。
 そんなときには、別々の最低3家族以上から認定を受けた者なら、プロと
 認めるとか、いろいろ、定めねばならないこともあるでしょう。
 また、制度を悪用した不正受給を防止するため、支払いは現金ではなく、
 ポイント制を導入するというのも考えられます。この介護報酬ポイントを
 上手に使えば、集中的に何人もの介護福祉士を雇って、不可能と思われた
 長期間の海外旅行に夫婦で出かけたりもできるでしょう。それに、切実な
 問題として、お子さんが被介護者の場合、加齢によって両親による介護が
 いずれ、できなくなってしまうことへの不安も、貯蓄した介護ポイントを
 残すことによって、兄弟とか、孫に託しやすくなることもあるでしょう。

 家族が介護する場合も、社会がコストを支払えば、本来、社会が担うべき
 介護を家族に押しつけて来たという事実が明らかになります。つまり、
 社会が個人に対してフリーライドしてきたことを強く認識させることが
 できます。実際に膨大なコストが新たにかかるとなれば、早急に社会が
 介護する仕組みを作って、コストダウンさせる必要が生じてきます。
 さらに、医療機器の更新や、新たな開発、近未来的には介護ロボットの
 開発など、人手を使わない介護を普及させて人件費を下げようとすること
 でしょう。機械化が進めば、訓練の難易度も下がって、有資格者の拡大に
 繋がっていきます。

 実は、家族介護の有償化には、医療機器を開発を促進させるという側面も
 あるのです。今ある技術で作ることができる革新的な医療機械あっても、
 価格が高くて市場に受け入れられないでいるとしましょう。でも、家族に
 タダ乗りして不当に下げられた状態であるから、高いと思われるわけで、
 コストが正当なものになれば、その価格のままでも、十分にリーズナブル
 だと判断されて、購入されるようになります。売れれば、大量生産できる
 ようになって、生産コストが下がります。価格も下がり、さらに売れる
 ようになって、いい機械が、どんどん、普及するようになります。
 そうなれば、世界市場に対して競争力が増すわけですから、売り上げが
 増え、利益を生まれ、技術開発への投資も増えていきます。そうして、
 国全体として増大化した介護コストが、介護のための市場獲得によって
 回収されるということになっていくのです。なっていくというより、
 そのように持って行くのが政治なり行政の本来の役割なんですね。

 24時間、身も心も安まることなく、死への恐怖に押しつぶされそうに
 なりながら、社会の支援を受けることができずにいる状態は、到底、
 健康で文化的な生活とは認められず、これを放置すれば、憲法違反です。
 そのことを厚生労働省 福祉人材確保対策室の翁川純尚室長補佐に
 訴えましょうよ。これ以上、タダ乗りしないでくれと。資格取得のための
 研修制度の整備を法改正という納期に間に合わすことができなかった
 犯人は誰なのか問い詰めましょう。これで、介護疲れによる無理心中が
 起きたら、未必の故意による殺人ですよと通告しましょう。そうすれば、
 予測不能だったとの言い訳は効きません。今の状態を「少しは」良くする
 というのではなく、根本的にどうすればいいかを考えねばなりません。

 痰の吸引にかかるコストを顕在化させるためにはと考えて、家族の医療
 行為の有資格化というアイデアにたどり着きました。コストの顕在化には
 他の方法もあることでしょう。ありとあらゆる方法の中から、有効な物を
 発見したり創出する上で、日本の官僚って、優秀です。でも、単にお願い
 するだけでは彼らは動きません。衆議院選が迫る今がチャンスです。
 すべての候補者に、家族の窮状を訴えて、どうするのか、どう取り組むのか
 取り組まないのか問いましょう。それは、彼らに課題の存在を明示する
 手段です。やってくださいとお願いすることではないのです。やれと
 命じなければなりません。民主主義とは、そのように行使する物です。
 多数決や票をまとめる力だけが、何かを決めるのではダメなのです。
 やらねばならぬことをきちんとやるのが政治です。家族が医療行為を
 行うことの有資格化について、Yes か No か、すべての候補者に対して
 ぶつけてみませんか?

 厚労省の役人は、アホではありません。何が課題なのかハッキリさせて、
 その課題は、すぐに解かねばならない問題であることを認識させ、解が
 あることを示し、もし、放置すれば、役人その人に責任問題がふりかかる
 ことをわからせれば、必ず、答えを出します。

 でも、その前に、今回、痰の吸引にについて考えるまで、そんな課題が
 存在していることを、私自身は、まったく、認識してませんでした。
 まずは、知ること。それが、最初の入り口だと強く感じています。
 現在、Google で、「痰の吸引」という検索語では、このブログは、
 7ページ目にしか表示されませんが、「家族 痰の吸引」という2語で
 検索すると、最初のページに表示されます。こんな、ネットの片隅で
 声をあげることで、何らかのメッセージを発信できるのですから、より
 多くの人に伝えれば、よりよい方法が産み出されていくと思うのです。
 私も、引き続き、何が出来るか考え、行動していきたいと思います。

2012年11月27日 (火)

家族による痰の吸引(3)

 では、痰の吸引は社会が引き受ける仕組みをどうやって作ればいいか。
 そうしなきゃ、ならーん!!!!と、声高に叫んでも、そうなるわけでは
 ありません。もちろん、声をあげ続けることは大切ですし、それを阻害
 するものは、ひとつひとつ、根気よく排除していかねばなりません。
 でも、それは、本道のようで、現状を打破して行くには、あまりにも、
 遠い夜道をトボトボと歩いて行くようなものだと感じるのです。

 ↓↓↓医療ケアを必要とする当事者同士が、Twitter でやりとりしてるログ

 A:たんが取れないときというのは、少し取れたとしても、さらに
   追求したくなる気持ちになる。
 A:痰が詰まって数十秒、息ができなくなったことは何度もあるし、
   そうなると恐怖を感じる。
 B:生理食塩水を 2、3滴シリンジで垂らしてみ?ちょっとむせるけど、
   スッキリ取れるよ。
 A:生理食塩水をカニューレを超えて肺にもっていくってこと?
 B:そう。反射があれば、垂らした瞬間ブヒッ!と咳をして、そのあと
   吸引すればスッキリ取れるんだけど。
 A:さっき、10滴くらい垂らしたけど特別な変化なしだったけど。
   これから痰が多くなったりするのかな…。
 B:むせないと取れないね。むせることによって、生食がカニューレを
   綺麗にしてくれるから。

  # 必要最小限の編集をしてますが、ほぼ、原文のまま。

 家族による吸引と言っても、そのほとんどを母親が担っているのではない
 のでしょうか。介護する相手が高齢者なら、娘とか嫁が主たる介護者と
 なるのでしょうが、いずれにしろ、一家の中の特定の女性がひとりで、
 背負っている姿が容易に想像できます。しかも、家事も他の兄弟の育児も
 普通に主婦がやることは、全部、押しつけられて、それでも、歯を食い
 しばって介護しているというのが現実ではないでしょうか。無論、世の
 平均的な家族に比べると旦那さんや子供達の協力度は大きいと思います。
 でも、母親は、日常的にギリギリの状態まで追い込まれていると思います。
 風邪をひいても、眠気がくるような薬は、飲めなかったりするでしょう。
 つい、居眠りして吸引ができずに窒息死させてしまったら…という恐怖を
 常に感じながら、身体は限界という状態を、何年、何十年、続けるしか
 ないという状態を放置するのは、これはもう、人権問題です。

 これを解決するには、代わりに介護してくれる人を増やすしかありません。
 そのための第一歩は、家族と言えども、無資格で医療行為はできないと
 すべきです。家族だけが、「違法性阻却」だのなんだの理屈を付けて、
 医療行為ができるのだから、家族に押しつけられるのです。特に母親に。
 でも、母親といっても、母親の数だけ母親がいます。どんな母親も、
 そんな押しつけにガマンし続けるワケではありません。まして、身体の
 限界まで追い詰められてまで、やってはいけないのです。

 医療行為が必要な者を退院させること自体が、矛盾です。それを在宅で
 治療を続けたほうが本人のQOLが向上するからなどと言うなら、ちゃんと
 病院がサポートすべきです。それを、「病状固定」とかなんとか、便利な
 言葉を作って、家族に押しつけるんじゃねぇよと叫びたい。だいたい、
 なんだかんだといっても、「危険な」医療行為を家族がやるなら安全って
 そこが、おかしいのです。家族がやって安全なら、他人でも安全だし、
 他人がやったら危険なら、家族がやっても危険です。

 それでも、なんとか、研修を受けて認定されれば、他人でも、正々堂々と
 痰の吸引ができるようになったじゃないかと、厚労省が胸を張るなら、
 糞喰らえです。医師会と看護協会の機嫌を損ねない範囲という足かせを
 つけて、法改正後、爆発的に痰の吸引ができる資格者が増えましたか?
 今後、どんどん、増えますか?資格を得た人たちが、大挙して在宅介護を
 担ってくれますか?すべて、No! でしょう。法改正の目的が、在宅で
 痰の吸引を行っている家族を救うものではなく、まして、在宅で介護を
 受けている当事者の生活の質を向上させるための法律ではないからです。
 家族以外のヘルパーさんなどが、医療行為を行うというグレーゾーンを
 厚労省として、認めてしまった一件を、なんとかして撤回したいだけの
 法改正でしょう。でも、法は法というなら、その法をもって、苦しんでる
 家族や当事者を救うことができるはずです。いいえ、救わないなら、
 法治国家とは言えないのです。

 現状を破壊することなく、家族と言えども無資格で医療行為はできないと
 するには、ふたつの方向が考えられます。ひとつは、痰の吸引は、医療
 行為ではなく、生活支援行為だから、一定の訓練さえ受ければ、誰もが
 できるようにすべきだという考え方です。でも、それは、今年4月の
 法改正以前の状態を公式に認めろというもので、その主張を認めさせる
 のは、現実的にかなり困難かと思います。

 では、もうひとつの方法とは何でしょう。家族であっても、有資格で
 なければ医療行為が、できないことにするのです。資格を得る手順は、
 これまでどおり、医師が家族に在宅での治療を認め、家族に対して訓練を
 施した時点で医療行為を行う資格を与えます。同時に資格を得た家族が、
 他者に対して訓練し、医療行為を行う資格を与える認定者として公的に
 認めるのです。ただし、当然ではありますが、特定の者が対象です。
 対象者の家族に対してだけの認定権です。

 しかも、家族の認定で与えられる資格は、痰の吸引だけに止まりません。
 人工呼吸器の操作・口鼻腔や気管内の痰の吸引・気管カニューレの交換・
 酸素投与・パルスオキシメーターの着脱などの呼吸管理や、、経管栄養
 チューブの挿入・注入・抜去、IVHの管理などの水分・栄養管理、
 座薬挿入・インシュリン投与などの服薬管理、じょくそうの手当、導尿、
 留置カテーテルの管理、摘便、人工肛門の処置などの排泄管理などなど、
 さらに、医行為ではなくとも、被介護者が必要とするすべての支援を
 行うことができる資格です。つまり、その家族が行っている介護なら、
 生活全般も含めて、すべて、やってもいいという資格を授与する権限を
 家族に与えるのです。他の家族は、もちろんのこと、近所のおばさん、
 ボランティア、親戚の人、通学している支援学校の職員、誰に対してでも
 資格を与えることができ、その範囲は、要するに、その母親なら母親が
 やってることすべてです。そうしないと、痰の吸引だけを誰かが代わって
 くれただけでは、母親は、結局、介護から解放されないのです。母親も
 含めて、家族全員が、二、三日、温泉旅行に出かけても、家族の認定を
 受けた者が代役を勤めることができなければ、意味がありません。子供が
 通学する支援学校の修学旅行に母親が付き添わなくても良いように、
 学校の職員なり先生が介護できなければ、母親は安息を得られないのです。

 次回は、そのコストを誰が担うのかとか、このアイデアを、もう少し、
 掘り下げていこうと思います。

2012年11月26日 (月)

家族による痰の吸引(2) 冒頭補記あり

 (2)を要約すると

 実際に家族による痰の吸引を行ってる方々にも、いろいろな立場の方が
 いらっしゃると思います。しかし、どの立場の人にとっても、まず、
 社会が介護する仕組みがあって、その中で、家族が介護したい時には、
 好きなだけ、家族が介護できるというのが、理想だと思います。

 というようなことです。

--以下は、原文--------------------------------------------------

 実際に家族による痰の吸引を行ってる方々にも、いろいろな立場の方が
 いらっしゃると思います。できることなら、すべて、他人の手を借りたい
 と思う方もいれば、入院中でも看護師などにまかえせることなく、家族の
 手で吸引を行いたいという方もいらっしゃいます。できるだけ、在宅で
 介護したいという方もいれば、できれば、施設で預かって欲しいという
 方もいらっしゃいます。それは、介護を受ける方の病状や年齢などの
 状況でも変わるでしょうし、それを介護する家族の状況にもよるでしょう。
 それこそ、千差万別、さまざまです。それに、とにかく、家族で介護して
 いきたいという希望を持っていても、時には、安心してまかせることが
 できるなら、他人の手を借りたいと思うでしょうし、何が何でも家族が
 行うのだと思っても、一家全員インフルエンザとか、食中毒とかで倒れた
 ときには、どうでも、他人の手を借りねばなりません。

 でも、できるなら、家族の手でと考える場合、他人にずかずかと家の中に
 入って欲しくないという気持ちもあるでしょうけど、何よりも、誰かに
 まかせるより、家族のほうが、きめ細やかで上手に介護できるからでは
 ないでしょうか。実際、何百回、何千回と行っていれば、熟練の看護師
 よりも、中学生の娘のほうが、上手にできるというのは、普通にあること
 だと思います。だからといって、この娘さんが、他の方にも上手に出来る
 とは限りません。それに、何らかの突発的な状況、地震とか、雷とか、
 くしゃみとか、胃の痙攣とか、停電とか、ゴキブリが自分に向かって
 飛んできたとか、何かの状況で手元が狂って、大出血させてしまうことも
 起こりえます。おそらく、家族で介護してる方のほとんどが、何百回、
 何千回と行ってる間に、何度かは、ヒヤリハットの経験があるのでは
 ないでしょうか。

 それに、家族も生活しているわけですから、仕事上や社会的な都合で、
 どうしても、介護がムリという状況に、しょっちゅう、追い込まれる
 わけですし、睡魔も襲うし、常に精神を強く持っておくこともできない
 わけです。24時間体制で介護が必要というわけじゃなくても、たとえ、
 日中だけだといっても、365日、休みがないのですから、ひとりでは、
 物理的にムリです。ですから、いきおい、ご夫婦とか、ご両親とか、
 ご兄弟とかの複数で介護にあたるケースが多いでしょうけど、これも、
 主として介護する方と補助的に介護する方とに役割を分けてしまいがちで
 そのことが、家族とはいえというか、むしろ、家族だからこそ、深刻な
 人間関係上の問題を発生させてしまうこともあると思うのです。

 それに、介護を受ける本人も、意識がある方なら、できるだけ、家族の
 負担になりたくない気持ちから、窒息の恐怖に耐えながら、ぎりぎりまで
 ガマンしてしまうとか、さまざまな問題を抱えていることでしょう。
 家族といっても、いろんな家族があるわけで、痰の吸引じゃありませんが、
 認知症が進んでいて、どうでも、介護の必要があることに近所の人が
 気がついても、独居老人で、家族に連絡したものかどうかってことも
 あったりします。で、家族に連絡しようにも連絡先がわからないとか、
 わかっているけど、連絡をためらってしまう家族であるとか、これまた、
 家族の数だけ、いろんな家族があります。

 こうして、考えれば考えるほど、家族だけが介護するよりも、社会が
 介護できる仕組みがあって、その中で、家族が介護したい時には、好きな
 だけ、家族が介護できるというのが、理想でしょう。では、その理想を
 どうやれば、実現できるのかということを次回、考察していってみたいと
 思います。

2012年11月24日 (土)

家族による痰の吸引(1) 冒頭補記あり

 (1)で、言いたかったことは、

 自分に対する医療行為は「違法性阻却」が適用されて、罪に問われない
 というのは、わかります。でも、だからといって、家族が医療行為を
 行うことも、本人に準ずるとして「違法性阻却」が、適用できるとする
 のは、かなりのムリがあるように感じます。

 今年4月の法改正によって、ヘルパーさんにも、業として痰の吸引を行う
 ための道筋ができたことは、喜ばしいことだと思います。しかし、認定の
 ために行われる研修カリキュラムは、あれもこれも必要以上に詰め込んだ
 内容となっていませんか?そして、そのことが、現役のヘルパーさんが
 受講しようにも時間面で困難だったり、講師となる看護師さんを確保する
 のが難しくて、研修会の回数や規模が小さくなっていませんか?
 いつまでに、どのくらいの数の資格者を確保するという計画はありますか?
 その計画は、家族による介護をヘルパーさんが肩代わりすることを可能に
 する計画ですか?そもそも、資格者を増大させようという意志があるの
 ですか?

 というようなことです。

--以下は、原文--------------------------------------------------

 自分自身に対して、自分が、いかなる医療行為を行おうが、基本的に罪に
 問われることはありません。それどころか、傷害や殺人さえも、違法行為
 ではないのです。首を吊って死のうが、ヤクザがオトシマエとして指を
 落とそうが、それ自体は犯罪ではないのです。これも、「違法性阻却」の
 ひとつですね。自殺に関しては、刑法の責任主義の観点から、責任が
 阻却されるため処罰されないとする立場もあるということですが、まあ、
 本題ではないので、さらっと、スルーしてください。

 で、家族の医療行為にも、本人に準ずるとして「違法性阻却」を適用する
 というのは、いささか、ムリがあるように感じます。だって、家族だから
 といって、自殺しようとしている人の手助けをすれば、罪に問われます。
 もちろん、情状酌量はされるでしょう(森鴎外の高瀬舟以来のテーマです)
 でも、違法性は阻却されません。ヤクザが指を詰めるとき、臆病風に
 吹かれて、中途半端になったとき、そのままじゃ止血できないから、
 兄貴分が手を貸せば、傷害罪に問われるでしょう。家族の医療行為に
 限って、本人に準ずるなんていう文言が出てくるのは、どちらかというと、
 病状が固定し患者を病院側としては退院させたいという都合があって、
 そのために、違法性を排除しようと、あれこれ、理屈をつけたようにも
 思えます。在宅療養させたいのだが、そのためには誰かが痰の吸引などの
 介護をする必要があり、しょうがない、家族にさせればいいってことに
 なったような気がするんです。だって、ヘルパーさんや、介護福祉士が、
 同じ事をやろうとすると、医師会だの看護協会だのが、とたんに、医療
 行為の危険性だの医師法だの保助看法だのを引っ張り出して声高に反対
 するのに、家族が行う場合は、病院でやり方を教えましょう、医師の
 指示の下に行われていると認めましょう、緊急時には支援しますよと、
 手のひらを返したように協力的じゃありませんか。

 と、まあ、以上のようなことは、一種の暴論を含んでいて、私自身でさえ、
 あまり、容認できない部分もあります。しかし、一片の真実も含まれて
 いないかというと、そうとばかりも言えないような気がするのです。今年
 4月の法改正によって、ヘルパーさんにも、業として、また、適法に、
 痰の吸引を行うための道筋ができたことは、喜ばしいことだと思います。
 しかし、実際にどのようなカリキュラムを組むかという議論に、看護協会
 などが、からんだ結果、必要以上に、あれもこれもと詰め込んだ内容と
 なって、痰の吸引ができるヘルパーさんを増やすのを阻害してないか
 という懸念があります。介護福祉士の養成課程においても、一律に、
 痰の吸引に関する課程を付加するのが、ホントにいいことなのかどうか。
 資格を得るための研修には、不適格者をふるい落とすという意味合いも
 あると思うのですけど、痰の吸引については、不適格でも介護福祉士
 としては適格な者を残さなくてもいいのかとか、気になることが
 多々あるのです。

 書き始めてみたものの、だんだんと、方向性があやしくなってきてます。
 ちょっと、お出かけの時間も迫ったことですし、続きは書くという約束で
 とりあえず、中途半端ですが、ここまでのところで、アップします。

2012年11月20日 (火)

ヘルパーさんの医療行為

 ヘルパーさんの医療行為については、すでに見てきた経緯があったわけ
 ですが、一見、今年4月の法改正によって、非常にせばめられてしまった
 感があります。ヘルパーさんの助けを必要とする家族にとっては、支援を
 受けられなくなって、切実な問題に直面しているケースも多いと思います。
 しかし、ヘルパーさんにとっては、事故が起きたとき、会社は責任を
 取ってくれない法改正以前の状態はリスクが大きすぎます。患者さん側に
 とっても、万一の時、何の補償も得られず、「善意でやってくれてたこと
 だから…」と、諦めるしかないというのも苛酷です。

 人手不足をおぎなうためだったはずの法改正が、立ち上がり時点での
 つまずきのために、現場が思わぬ事態に陥ってるというのは、前の記事で
 見てきたとおりです。でも、この法改正によって、介護サービス事業者が
 「業として」痰の吸引ができるようになったというのは、やはり、進歩
 だと思えるのです。法改正以前の状態は、窮余の一策の域を出ていない
 ために、たとえば、介護施設に勤務しているヘルパーさんが、夜勤の
 看護師が不在のために、痰の吸引を強要されて悩むといったケースが、
 多々あったようなのですね。法改正以前なら、「違法性阻却」の考えで
 ヘルパーさんが行ってもよさそうなものですが、痰の吸引と言っても、
 口腔内と咽頭内では、段違いにリスクが違うし、歯がそろってる入所者
 には、鼻からチューブを入れて吸引しなければなりません。これは、
 資格だけの問題ではなく技術を伴うので、看護師でも、下手な人は、
 血だらけにしちゃうというんです。でも、目の前に痰の吸引をしなければ
 窒息して死んでしまう人がいるとき、痰の吸引をすれば、違法行為で、
 しなければ死んでしまうとなると、たったひとりで夜勤しているパートの
 ヘルパーさんは、胸を引き裂かれる思いをするんじゃないんですかね。
 でも、放置しても未必の故意による殺人容疑をかけられそうで、どっちに
 しても、救われない話です。法改正があっても、現場では、すぐには、
 看護師が拡充されるわけでもないし、これまでなら、よっぽどのことが
 ない限りナースは呼ばずに介護ヘルパーさんがやってたことも、いちいち、
 呼ばねばならぬほうも、呼ばれるほうも大変だと想像できます。そして、
 夜勤のナースの労働が苛酷になれば、やめていく人も出て、現場は、
 さらに大変になっていくというのも十分考えられます。

 ヘルパーさんの医療行為に関する問題について考えて行くには、資格を
 持った介護福祉士と、一般の介護職員、パートさんと、それぞれの立場と
 事業所の管理者の資質、入所者の範囲、事業所そのものの設備や体制など、
 さまざまな視点が必要で、門外漢である私が、それを行っていくには、
 おのずと限度というものがあるでしょう。それでも、今回、いろいろ、
 調べていってみて、素人だから、何の専門知識もないからと、何も考えずに
 いていいものとは、どうしても思えませんでした。でも、一方で、生半可に
 集めた情報だけを頼りに、あれこれ、考えることに、どれほどの価値が
 あるのだろうとも思います。まあ、それでも、なんらかの情報を得るには、
 まず、情報を発信してみることだという経験則に従って、もう少し、
 医療の問題について考えて行こうと思います。

2012年11月19日 (月)

痰の吸引

 家族の痰の吸引問題を調べていくうちに、さまざまなことがわかり
 ました。とりあえず、古い情報だけを見て、私が勘違いしていた
 ヘルパーさんの痰の吸引について、書いてみたいと思います。

 医療に関しては、今後、我が身にも切実に降りかかる問題であり、
 少しずつ、考えをまとめたいと思います。しかし、ちょこちょこっと調べて
 書けるテーマではなく、さまざまな誤謬も混じりそうなので、できれば、
 皆さまのツッコミをいただいて、あらぬ方向に飛んでいかないように、
 軌道修正をしながら進めてまいりたいと思います。

 よろしく、お願いいたします。

 2005年の3月に厚生労働省が通知を出して、ALS患者以外に対しても、
 ホームヘルパーが痰の吸引を行うことができるようになりました。
 ALS患者に限っては、すでに、2003年7月に、認められていましたが、
 拡大されたのです。しかし、その内容は、患者さんや家族から依頼を
 受けて、ヘルパーさん個人と「吸引を実施することに同意します」という
 同意書を交わし、個人の責任で吸引を引き受けるというやり方でした。
 「違法性阻却」を根拠とした容認だったのですね。「違法性阻却」って、
 むつかしい言葉ですが、わかりやすい例をあげれば、殺されそうになった
 とき、自衛のために抵抗して、その結果、相手が怪我をしたり、場合に
 よっては、死に至っても正当防衛が認められるというようなのが、
 「違法性阻却」です。
 あくまで、ヘルパーさん個人が厚意で引き受けるというものですから、
 「吸引した時間はボランティアだから、介護時間から差し引いてください」
 と指導した行政まであったようです。

 しかし、厚生労働省は、研修を受けた介護職員などに医行為を認める
 制度を今年度から発足させるにあたって、2005年の3月に出した通知を
 「原則廃止する方向」としました。
 ただし、現時点で「実質的違法性阻却」によって医行為を行っている
 ヘルパーさんについては、来年度以降、医行為の提供に必要な知識と
 技能を修得していることを申請に基づき証明した上で、引き続き
 医行為を行えるとしました。

 こういう経過をたどって、今年の4月に法が改正され、ヘルパーさんに
 研修を行い自治体が認定することになりました。ところが、その研修が
 少なくとも8月まで、ほとんど、行われなかったのです。法は改正された
 けど、研修カリキュラムの準備や自治体への周知が遅れてしまったから
 です。しかも、やっと、9月には、研修を始めるための最低限の準備は
 できたようなのですが、指導を行う看護師が負担が大きくてなかなか
 集まらない、ヘルパー自身も仕事が忙しくて研修を受ける時間を確保する
 ことができないなど、研修の進め方には問題が山積しているとNHKが
 番組の中で報じました(8/29 おはよう日本)。

 しかも、この法改正以前に、痰吸引を行っていて経過処置で医行為を
 行うことを認定された者も、認定されたときに受け持っていた特定の
 人だけについての認定であって、4月以降の制度による医行為を行おう
 とすれば、一部、免除はあるけれど、改めて研修を受けて、資格を取る
 必要があります。

 在宅の場合、家族しか、痰の吸引ができません。他の人が厚意で代わって
 あげると、今度は、はっきりと違法になってしまいます。
 2004年8月に、神奈川県相模原市で起きた、40歳の男性のALS患者の
 看病に疲れた母親が人工呼吸器の電源をはずし、自らも手首を切って
 重傷を負うという無理心中のような事件が、また、発生しても、おかしく
 ない危機的な状況なのです。気管切開をして人工呼吸器を装着した患者は
 30分ごとに一日50回もの吸引がなければ生きていけません。昼夜を
 問わず痰の吸引をするということは、患者は熟睡することができません。
 これも、苛酷ですが、同居して痰の吸引をしなければならない家族の
 負担は、筆舌に尽くしがたく、誰かに代わってもらおうにも、たった、
 ひとりで看病していたら、逃げ場を失ってしまいます。

 ALS患者の場合、意識がありますから、夜中に何度も家族を起こさねば
 ならない負い目を感じながら、窒息死してしまうという恐怖とも闘い続け
 ねばなりません。しかし、明るいきざしが無いわけでもありません。
 痰の自動吸引器「アモレSU1」は、終日装着が可能で、患者自身も、
 看護する家族も、朝まで、ぐっすり眠ることができるようになりました。

  http://ryudio.com/auto-suction/index.html
  http://www3.coara.or.jp/~makoty/als/autosuc_manual_2010/autosuc_manual_01.htm
  http://homepage3.nifty.com/tokuso/jiritusien3.htm

 興味のある方は、↑↑↑などのページを参照下さい。

 ヘルパーさんが行う痰の吸引については、とりあえず、以上です。家族の
 行う痰の吸引については、別記事にしようと思います。